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2010年3月号「その人のことは知らない」
「ペテロの否認」レンブラント(1606-1609)
ペテロは下で中庭にいたが、大祭司の女中のひとりがきて、ペテロが火にあたっているのを見ると、彼を見つめて、「あなたもあのナザレ人イエスと一緒だった」と言った。するとペテロはそれを打ち消して、「わたしは知らない。あなたの言うことがなんの事か、わからない」と言って、庭口の方に出て行った。ところが、先の女中が彼を見て、そばに立っていた人々に、またもや「この人はあの仲間のひとりです」と言いだした。ペテロは再びそれを打ち消した。しばらくして、そばに立っていた人たちがまたペテロに言った、「確かにあなたは彼らの仲間だ。あなたもガリラヤ人だから」。しかし、彼は、「あなたがたの話しているその人のことは何も知らない」と言い張って、激しく誓いはじめた。するとすぐ、にわとりが二度目に鳴いた。ペテロは、「にわとりが二度鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われたイエスの言葉を思い出し、そして思いかえして泣きつづけた。(マルコによる福音書14:66-72)
ペテロさんは、ガリラヤ湖のほとりで弟のアンデレと魚を獲る網を打っていた時にイエスさまから「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう。」と言われ網を捨ててイエスさまに従って以来、ずっと、イエスさまの弟子の代表として行動してきました。ピリポカイザリヤでイエスさまが「あなたがたはわたしを誰と言うか。」とお尋ねになった時には、「あなたこそキリストです。」と告白しました。
そんなペテロさんですから、過越の食事の後、オリブ山へ行く途中でイエスさまが「あなたがたは皆、わたしにつまずくであろう。」とおっしゃった時にも、「たとい、みんなの者がつまずいても、わたしはつまずきません。」と言いました。イエスさまが「今夜、にわとりが二度鳴く前に、そう言うあなたが、三度わたしを知らないと言うだろう。」とおっしゃっても、「たといあなたと一緒に死なねばならなくなっても、あなたを知らないなどとは、決して申しません。」と言いました。
イエスさまが捕らえられました。すると、弟子たちは、みんなイエスさまを見捨てて逃げてしまいました。ペテロさんはイエスさまのことを心配して、大祭司の中庭まで様子を見に来ました。きっと、ペテロさんは、他の弟子たちが来なくても、自分は最後までイエスさまに従っていこうと、その時は思っていたに違いありません。
ところが、その時、一人の女の人がペテロさんに「あなたもナザレ人イエスと一緒だった。」と言いました。ペテロさんはびっくりして、「いえいえ、わたしは知らない。あなたの言っていることがなんのことか、わからない。」と言って逃げようとしました。女の人は周りの人たちに「この人はあの仲間のひとりです。」と言い始めました。ペテロさんは再び「違う違う、わたしは知らない!」と否定しました。すると周りの人が「確かにあなたは彼らの仲間だ。あなたもガリラヤ人だから。」と言いました。しかしペテロさんは必死になって「その人のことは知らない!」と言いました。ペテロさんは、自分の身を守るために三度も「イエスさまを知らない。」と言ってしまったのです。その時、にわとりが鳴きました。
にわとりの声を聞いて、ペテロさんははっと気づきました。自分はけっしてイエスさまを裏切るようなことはないと思っていたのに、イエスさまがおっしゃったとおりに、イエスさまを裏切ってしまったのです。ペテロさんは、はじめて自分の弱さに気づき、泣き続けました。
私たちも、ペテロさんのように弱い者ですが、イエスさまの愛に励まされ、イエスさまに従ってゆきましょう。
(お話 忠岡 博)